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C1220319 伊藤寧音さん (8sweybwp)2023/7/20 12:20 (No.852123)削除もやいが救う人々ーー湯浅誠『反貧困ー「すべり台社会」からの脱出』(岩波新書、2008)
本書は、実際の貧困現場の様子がどうなっているのかということから始まり、そこから貧困は自己責任なのかであったり、あまり聞きなじみのない「反貧困」という言葉を用いながら、今後の社会への展望までが論じられている。著者は、もやいという住所不定状態にある人たちに対するアパート入居時の連帯保証人提供と、生活困窮者に対する生活相談を2本柱とした団体で活動しているので、貧困についての知識が豊富で非常に読み応えがある。
本書によれば、著者、そして一緒に活動している同志は、この活動を始めた当初は多くの人たちから心配や批判とも取れるような忠告を受けたそうだ。それは、この活動の支援を受ける人たちの7割がホームレス状態にある人で、残りの3割の人たちは、DV被害を受けて居所を逃げ出してきた人たちであったり、ネットカフェ難民であるからだ。多くがホームレス状態にある人たちの連帯保証人になったとすると、ほとんどお金がない人たちなので、この活動が破綻してしまうのではないかという心配があるからだ。
しかし、実際には滞納などの金銭トラブルに陥ってしまうことは5%ほどであり、約95%の人たちは少なくとも連帯保証人に金銭的な負担をかけずにアパート生活をしている。この事実をもっと多くの人が知ることで、ホームレスの人たちはアパート生活などできない、もしくはしたくないというこの社会で浸透してしまっている偏見を払拭できるのではないかと著者は考えている。
この本を読んで特に感じたことは、貧困に陥ってしまうとどうすれば良いかわからなくなってしまいがちであり、そうした人たちを支えるシステムがもっと必要であり、そしてもっと社会全体に周知されるべきなのではないかということだ。このもやいという団体の活動内容を初めて見た時に、連帯保証人を提供したりする団体などないと思っていたので衝撃を受けた。この本では、貧困現場のリアルなどを知ることができる。貧困に対して興味がある人や、貧困現場の実情を知りたい人におすすめの1冊である。
(838字)