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c1220325 伊藤正葵さん (8t4e3qqh)2023/7/26 02:19 (No.857266)削除加速する情報化の中で――丸田一 『ウェブが創る新しい郷土 地域情報化のすすめ』(講談社現代新書、2007)
本書は、1990年代以降一部の地域にて盛んになった「地域情報化」の波の中、それに乗れず「実体が希薄になっている地域」の現状を始発点として、今後どんな手法によって「地域情報化」を広範囲化し、それらの改革が生み出す地域への良い影響を提示し、得られる利益について論じられている。また著者はこの「地域情報化」の課題に対し多様な側面から問題解決へのアプローチを行っている。
本書のタイトルにも挙げられている「地域情報化」について、この言葉はインターネットのような広範囲の情報基盤に加えてラジオ局などの地域に根ざした情報機関を通じて「地域プラットフォーム」を形成、NPO・NGOの団体や地方公共団体と地域住民などの複数の主体間で情報や知識の共有を行い、地域が抱える社会問題の解決や地域社会の活性化を促すことを指している。
本書において富山県にある生涯学習の地域プラットフォームである「富山インターネット市民塾」という団体の活動について触れられているが、この組織は全国に先駆けて富山県が「生涯学習」というコンセプトのもとに双方向メディアを通した教育のシステムの事例である。市民個人個人が自分が持ち得ている知識を基に講義や授業を市民へ提供することによって世代間の交流や事業に一度失敗してしまった人々の再チャレンジのためのきっかけ作りも担っている。世代間の交流に関しては若い世代が知らない地域の事を知り地域活性化につながる活動ともされた。
また新潟の佐渡島では、「佐渡、お笑い島計画」という地域メディアの事例が存在している。この活動は芸人を島に招き、実際に島の住民との交流を通して島の魅力をインターネットなどの手段を用いて対外的に発信する活動であったのだが、この活動は同時に住民たちの島の魅力の再発見を促しさらにはその地域に対する印象さえも改善するなどの効果も存在していた。
故郷や郷土という概念は現代において薄くなっている様に感じていたが、本書を通して逆に「地域情報化」が地域の存在を明確なものに変えていると感じられた。 (848文字)