NPO・NGOの現場からうまれた文献のbook review

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C1221141 佐藤康晴さん (8t3p5dwo)2023/7/25 14:40 (No.856679)削除
身体を売る女性の真実――坂爪真吾『「身体を売る彼女たち」の事情―自立の依存の性風俗』(筑摩書房、2018年)

坂爪真吾さんは、日本の風俗産業で働く女性たちについて語られている本「身体を売る彼女たちの」事情を書いた人である。この本は、従来の風俗産業に対する悪いイメージを払拭し、現実的かつ客観的な視点を提供することを目的とされている本である。
この本での坂爪のアプローチは、現場に出向き。女性たちとその労働条件、生活環境、日々の仕事の実態についてのインタビューを行うことであった。それにより、風俗産業というものがどのようなものであるか、そしてその女性たちがなぜ風俗産業に身を投じるのかについて、客観的な視点を与えてくれる本である。
坂爪のインタビューでわかった現実は、我々が風俗産業に対する既存の固定観念とは異なるものであった。風俗産業に携わる女性たちの背景には、家族や友人、または精神的に不安定な恋人といった人的関係による悩みがあったり、女性たちが偏見や差別に直面したために就労先が限られるなど、様々な要因があることが明らかになった。さらに、風俗産業に対する女性たちの意識も、現在の一般的な認識とは異なるものであった。彼女たちは自分たちの居場所を見つけ、明確な目標を持ち、経済的、社会的、心理的な利益を追求していることが、坂爪の調査によってわかった。また、女性たちの多くがこの仕事に熱意を持っていることまでわかった。
この本によって、風俗産業にまつわる常識や偏見に対して見直しを促し、その現実を知り、理解することが重要であることが示された。しかし、現実として、風俗産業には強制的に従わされる女性たちもいることは否定できず、その問題に対しても対策が必要である。総じて、坂爪真吾さんの本「身体を売る彼女たちの」事情は、風俗産業に対するイメージを見直すきっかけになり、精神的、経済的、社会的な側面から、現実的な問題を考えることを教えてくれるのである。
最後に、この本は私自身にとって、性風俗に携わる女性たちが抱える問題を深く理解することができるとても良いな教材となった。私たちが、性差別や理不尽な扱いを受ける女性たちに対し、自身の価値観や偏見を見直し、共に問題解決を目指すことが求められる時代になっていると思う。(878語)
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c121207森涼平さん (8t3p4kg2)2023/7/25 14:40 (No.856678)削除
はじめての不倫学「社会問題として考える」坂爪真吾2015年
本書は、既婚者が「不倫」の誘惑の抵抗のため、「不倫」に伴い悪化していくものがいくつも潜んでいるが、個人の色恋沙汰、モラルの問題として捉えられているのが現状。不倫を社会の問題として捉え直すことによって不倫の予防と回避のための処方箋を提供する。まず、不倫は「既婚者が、配偶者以外の相手と恋愛感情を伴った肉体関係を持ち、かつそこ関係を継続する意志を相手方と共有していること」と定義。今の社会、連絡を取れる携帯、SNSの普及で、「歴史史上、最も不倫しやすい社会」となっている。法律上、不倫は不貞行為で、「不法行為」に該当。その範囲は性交以外に、性交類似行為も含まれている。不倫された側は、損害賠償を請求できるが、離婚理由になるには反復的に不貞行為を行っていることが必要。オープンマリッジという言葉がある。夫婦がお互いを社会的・性的に独立した個人として認め合い、合意の上で自由に愛人を作れる結婚のスタイルのことだ。パートナー以外の人と交際することで成長し、二人の関係がより豊かになれば良いという考えだ。また、「高級会員制交際クラブ」これは、既婚男性に婚外での交際相手を紹介してくれるサービスだ。ただ、これを利用して出会った女性と性行為をしても、心の穴を埋められないという話がある。婚外セックスに乗り出す人は存在するが、それを語るための語彙は貧しいままで、社会的な扱い方についての議論は深まっていない。だが現行の夫婦関係を維持するための、不倫ワクチンとしての婚外セックスは、社会の秩序を守るための行為だ。一夫一妻制な限り、不倫に走る人は居なくならない。せめて、ポジティブ婚外セックスを条件付きで受容し悲劇の発生率を低めるべきと筆者は推奨している。それにより、不倫は減らなくても家庭等の悲劇は減らせるはずだと述べている。
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C1220644 樺山愛乃さん (8t1ajfai)2023/7/23 22:16 (No.855208)削除
いじめという社会の病巣一一阿部泰尚『いじめと探偵』(幻冬舎新書、2013)

大きな社会問題であるいじめは様々あり使いっ走り、仲間はずれといった軽度のものから度重なる暴力、カツアゲ、中学・高校生による集団クラスメイト・レイプという極めて悪質なものまで存在する。いじめと探偵の本の中で著者が実際にいじめ調査の現場で見聞きしたいじめの現実をできるかぎりリアルに再現し紹介している。そして本書はいじめられている子供、いじめる子供、親御さん、担任の先生など関係者の心の動きに至るまで可能な限り分かりやすく説明している。ほとんどの被害生徒はいじめを必死に隠し周囲に相談しない。仮に子供が告白し親が学校側に相談しても多くの学校は調査すらしない。そればかりか「証拠を持ってこい」と言う。そこで調査、尾行、録音・録画に秀でた探偵の出番となる。
いじめ調査の具体的な例として衝撃的だった内容である低年齢化する集団レイプ、猥褻行為の強要である。女子生徒が同じ学校に通う気の弱そうな女子生徒を集団レイプが行われる友人宅や学校内などの場所に呼び出す。呼び出された女子生徒が何も知らずにその場に行くと、同級生な上級生の男子生徒と女子生徒複数が待ち構えており、レイプの間手引きをした女子生徒は一部始終を現場で眺めていてこのような全てのケースで加害生徒がその行為をケータイの動画などで撮影していた。このような被害生徒にはまず何があったのか聞き出し、親御さんから探偵の依頼を受けた際には何があっても親は子供の味方であることを伝え、嫌なら学校に行かなくてもいいと告げて安心させ話せる雰囲気をつくることが大切だと述べている。被害にあってから男性不信に陥り阿部以外の男性と口が聞けなくなった女の子もおり、心の傷は深く長期のケアやカウンセリングが必要なことが分かる。このようなレイプ被害者に対して阿部は日記を送ってくれと頼み事件から何年たっても彼女達の個人的な相談に乗りメールに必ず返信しているそうだ。探偵としての役割である調査を終えても相談に乗り彼女たちの心の支えになっている事が理解できる。
探偵は1人でも多くの子供たちを救えたらと思い、今日も目の前の問題を追いかけ続けている。(880字)
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C1220733 工藤楽来さん (8t1a8ic9)2023/7/23 22:07 (No.855199)削除
障害者と私たち――渡辺一史『こんな夜更けにバナナかよ』(文藝春秋、2013年)

 本書は当時フリーライターだった著者が北海道の喫茶店で新聞社の編集者に「ある話をテーマにして本を書かないか」と言われたことがきっかけで“進行性筋ジストロフィー”という難病を抱えている“鹿野靖明”という男を知る。その鹿野靖明さんやボランティアの若者たちなどを著者の目線で彼が亡くなるまでを書いた物語である。この物語は主に「障がい者」と「ボランティア」という大きく分けて2つのテーマがあると考える。
 まず「障がい者」についてだ。今回は物語の中心人物である鹿野靖明さんを例として私が学んだことを述べていく。「進行性筋ジストロフィー」とは、全身の筋力が徐々に衰えていくという病気で、医療の発展した現在でも根本的な治療薬がないほどの難病である。ここまでの情報の限りだと「可哀想」というような印象しか持てないだろう。しかし、この本で語られている鹿野靖明さんは非常にユーモアがありボランティアの人がミスをすればしっかりと𠮟るといったようなごく普通の人間であった。この本を読むまでは障がい者と言えば「自分のよりも弱い存在」「可哀想な人たち」といった自分たちよりも下の存在であるという認識でしかなかった。障がい者に対してのこれまでの価値観を一変しなければならないと気付くことができた。
 次に「ボランティア」についてだ。この物語には様々なボランティアの方々が登場する。ボランティアや介助といったもののイメージは、それらに関わっていない者は「してあげるもの」という認識をする人が多いだろう。しかし、この本では「してあげるもの」ではなく「させていただいているもの」というとらえ方をしているのだ。私も海岸清掃ボランティアなどに参加した際に少しわかった瞬間がありとても共感した。
 障がい者のイメージとして「可哀想な人たち」という偏見は日本では特に感じてしまう。作中でも出てきたボランティアの人手不足も深刻な問題である。それを踏まえ私たちは同じ人間であり、支え合っていくことができる仲間であることを気付くことができた一冊だった。(845字)
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C1210166 石井塁さん (8t01dses)2023/7/23 01:12 (No.854510)削除
ドキュメント 高校中退--青砥恭『いま、貧困が生まれる場所』(ちくま新書 2009)
本書は、始めに高校中退の現実について述べ、実際の高校で起きている問題や、その背景について触れている。はじめに、埼玉県や大阪府の底辺校と呼ばれる高校の現状に触れており、生徒たちの状況、家庭のネグレクトなどの不登校になる要素が沢山集まっている状況であると書かれている。第一部第二章の「中退した若者たちに聞く」の項目では、実際に高校を中退した若者たちへのインタビューも掲載されており、当事者からのエピソードも語られている。そこでは、家庭環境や本人、周囲の状況などが理由での不登校・中退に至ることが書かれている。職場が無い、夢が無い、暴力をふるう、学力が足りない、理想と現実のギャップ、ドロップアウト、校則の厳しさ、DV、家庭内の連鎖、出産、ネグレクトなど、各家庭それぞれに複合的なネガティブ要素が集まり、結果として中退してしまったという状況となっている。
第一部第三章では、子どもの貧困について4節分書かれている。そこでは、第一節の保育所が貧困に直面している現実も書かれている。
そこでは、母親が抱える悩みや問題について深く書かれている。そこでも複合的な問題が重なった結果子どもの貧困が生まれてしまっている事が分かる。中には、貧困に喘ぐ子どもたちが障害を抱えているケースもある。もちろん、家族が障害を抱えるケースも少なくない。第二節にて、詳しく述べられている。D市に所在する障害児支援施設にも、貧困層の家庭の子どもがおり、家族が子どもを育てられない状況になっている。
最後に、高校中退と貧困は深く関係し、サイクルになっているといえる。第四章「なぜ高校をやめるのか」で取り上げられており、7つの要素がサイクルする事で原因として考えられている。
戦後日本の中学生の不登校率は2004年時点で終戦直後並の水準になっているが、現在は更に上がっている。そこにはコロナウイルスによる子どもの貧困も発生している。セーフティネットを作ることで子どもたちやその家族が救われる兆しが見えてくるはずだ。(868字)
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C122161A 竹田隼人さん (8szh7xli)2023/7/22 15:47 (No.854105)削除
市民電力会社の必要性――小坂正則『市民電力会社をつくろう!-自然エネルギーで地域の自立と再生を』(影書房、2012年)

 本書は1986年のチェルノブイリ事故や3.11の福島原発事故を受けて、著者の出身である大分県で反原発・脱原発から自然エネルギーの普及へ、そして市民電力会社の設立の夢を実現させるために取り組んできたささやかな歩みと、その夢を実現するための具体的なプランに関する内容が述べられている。
 本書によると、著者は既存の電力会社のように放射能のゴミを出し続ける原発の電気ではなく、小水力や太陽光や風力などで発電したクリーンな電気を販売する『市民電力会社』をつくるという10年以上前から温めていた夢があった。しかし、当初は九州電力に対する反原発の市民運動仲間から『そんな非現実的な夢のようなことは無理よ』と冷ややかな目で見られていた。それでも著者はこの10年間、一貫してその夢に向かって、さらにはいつの日か自然エネルギーで地域が自立できる社会を目指して動いていった。そして、東日本大震災という未曽有の原発震災を経験した今、この夢を一刻も早く実現させなければならないと思うようになったという。つまり既存の電力会社にはまかせられないということである。それには『節電にご協力ください』などと言っているが、実際は不必要な電力需要を作り出して原発を維持、新・増設するという『マッチポンプ』を自ら演じてきたり、人権意識が希薄であったりした背景がある。これより、電力会社に地域独占の資格はないと考えられる。
 本書を通して、既存の電力会社には闇の部分があり、市民電力会社が将来必要不可欠になってくることを気付いたと同時に、『豆腐屋の四季』で有名な作家の松本竜一さんとの出会いが著者の運命を変えることに繋がったことも知った。以上のことから、電力会社の独占状態から、電力会社と市民電力会社と対等な関係を持つ体制へと変えることによって、日本の発電方法が原発から自然エネルギーへと切り替わる時代がやってくると思う。原発建設に反対する人や再生可能エネルギーに興味を持っている人は、ぜひ本書を手に取ってほしい。(824字)
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C1220609 加藤俊介 訂正版さん (8szdmu3r)2023/7/22 14:21 (No.854043)削除
ブラックバイトの恐ろしさ—今野晴貴『ブラックバイト 学生が危ない』(岩波新書、2016)

本書の作者である今野晴貴は、学生たちを食い潰し、今や社会問題となっている「ブラックバイトの実態やその原因を取り上げ、なぜ学生がブラックバイトに飲み込まれてしまうのかということを実際に起きた実例を用いて、ブラックバイトの恐ろしさを述べている。
 ブラックバイトとは、アルバイトやパートなどの非正規雇用者に対して、過剰な業務や日程拘束、過剰なノルマ強要など、劣悪な労働条件で酷使するアルバイトのことである。
本書で取り上げられていたものとして、とある全国チェーン店で働いていた学生の事例があった。交遊費を自分で賄うためにバイトを始め、当初は学業との両立もできており、とても楽しかったそうだ。しかし、1人の従業員が店長からのパワハラが原因で辞めたことをきっかけに、その学生にほとんどの仕事が回ってきた。勤務数も増え、その学生はやめたくても辞められない状況、店長からのひどいパワハラや脅し(損害賠償請求など)、責任など様々な要因が重なって死にたいと思ったそうだ。私は、この店長の行動に対して学生に対してとる行動ではないと思う。むしろ大人として恥じるべきだ。学生がなぜこのような思いをしてまで働かなければならいのか、そこがブラックバイトの恐ろしさである。
 学生が、ブラックバイトに飲み込まれる最大の原因として、学生の貧困と奨学金問題が挙げられる。ブラック企業対策プロジェクトのアンケート調査結果から、「生活費を稼ぐため」、「学費を稼ぐため」にアルバイトをしている割合が高いと分かった。このように、学生側の経済的事情を理由に、使用者は過重な業務量やノルマを強要して、学生たちを苦しめ、支配している。
 本書を通して、ブラックバイトの恐ろしさに気付いたと同時に、身近な存在であるということも知った。このような労働環境が改善し、世の中からブラックバイトが無くなれば、学生たちも安心して働くことができると思う。アルバイトのことで不安や悩みを抱えている人は、ぜひ本書を手に取ってほしい。(865字)
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C1220609 加藤俊介さん (8szdmu3r)2023/7/22 14:07 (No.854033)削除
ブラックバイトの恐ろしさ—今野晴貴「ブラックバイト 学生が危ない」(岩波新書、2016)

本書の作者である今野晴貴は、学生たちを食い潰し、今や社会問題となっている「ブラックバイトの実態やその原因を取り上げ、なぜ学生がブラックバイトに飲み込まれてしまうのかということを実際に起きた実例を用いて、ブラックバイトの恐ろしさを述べている。
 ブラックバイトとは、アルバイトやパートなどの非正規雇用者に対して、過剰な業務や日程拘束、過剰なノルマ強要など、劣悪な労働条件で酷使するアルバイトのことである。
本書で取り上げられていたものとして、とある全国チェーン店で働いていた学生の事例があった。交遊費を自分で賄うためにバイトを始め、当初は学業との両立もできており、とても楽しかったそうだ。しかし、1人の従業員が店長からのパワハラが原因で辞めたことをきっかけに、その学生にほとんどの仕事が回ってきた。勤務数も増え、その学生はやめたくても辞められない状況、店長からのひどいパワハラや脅し(損害賠償請求など)、責任など様々な要因が重なって死にたいと思ったそうだ。私は、この店長の行動に対して学生に対してとる行動ではないと思う。むしろ大人として恥じるべきだ。学生がなぜこのような思いをしてまで働かなければならいのか、そこがブラックバイトの恐ろしさである。
 学生が、ブラックバイトに飲み込まれる最大の原因として、学生の貧困と奨学金問題が挙げられる。ブラック企業対策プロジェクトのアンケート調査結果から、「生活費を稼ぐため」、「学費を稼ぐため」にアルバイトをしている割合が高いと分かった。このように、学生側の経済的事情を理由に、使用者は過重な業務量やノルマを強要して、学生たちを苦しめ、支配している。
 本書を通して、ブラックバイトの恐ろしさに気付いたと同時に、身近な存在であるということも知った。このような労働環境が改善し、世の中からブラックバイトが無くなれば、学生たちも安心して働くことができると思う。アルバイトのことで不安や悩みを抱えている人は、ぜひ本書を手に取ってほしい。(865字)
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C1220615 加藤美帆さん (8szc5gro)2023/7/22 13:25 (No.853999)削除
高校中退と貧困の関係――青砥恭『ドキュメント高校中退-いま、貧困がうまれる場所』(ちくま新書、2009年)

本書は、貧しい家庭で育った高校生が毎年10万人近くが高校中退するという事実を「貧困問題」と関連付けて論じたものである。すなわち「高校中退」を語らずして貧困問題を語ることは出来ない。
日本の子どもの学力はなぜ低下したのか、子どもはなぜ荒れるのか…これらの問題は学校や教育が崩壊したといった言説があったが、本質は学校崩壊ではなく膨大な貧困層の登場だったのである。「あなたは親から期待されていると思うか」という質問にいわゆる進学校の生徒は70%が「期待されている」と答えたが、底辺校の生徒は60%が「期待されていない」と答えた。貧困(家庭の所得の差)は子どもへの期待や愛にまで格差がついてしまうのである。期待されていない、愛されていないと感じる子どもが一生懸命、勉強しようとか、何か頑張ろうとか、人生を前向きに考えようとするだろうか。この結果が、本書のテーマである高校中退の研究の出発点となった。
高校中退した若者は中退したら仕事がなかったと語っている。アルバイトですら高校卒業以上の学歴を求められる。従って、高校中退者にはほとんど仕事がなく、社会の底辺で生きていくことになる。
要保護児童生徒と準要保護児童生徒が受給できる就学援助というものがある。就学援助とは、経済的な理由で就学困難と考えられる小・中学生に対して、学校教育を受けるために必要な経費を援助することである。山形県は就学援助率の低い都道府県3位であり、地方は所得が低くても自宅の自己所有率が高いことがセーフティネットとなっている。その反面、都市は就学援助を受けている子どもの数が全国平均の2倍も存在し、地方から働きに来た貧困層が集中することで都市の貧困層に対するセーフティネットのなさがストレートに子どもの貧困につながっている。
若者たちの貧困は日本社会の最大の問題である。我々の抱える最大の問題をひとつになって考えるためにも、本書を手に取って欲しい。(795字)
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沼澤里玖さん (8sz8j6ri)2023/7/22 11:44 (No.853957)削除
引きこもりの現実と私たちの向き合い方——久世芽亜里『コンビニは通える引きこもりたち』(新潮社、2020年)

本書は著者の久世さんが所属する「認定NPO法人ニュースタート事務局」による、引きこもりへの支援活動を通して親も含めた周囲がどのように向き合っていけばいいのかについて、焦点が当てられている。
私たちが引きこもりという言葉を聞いたとき、家もしくは自分の部屋から一歩も出ない、家族とすら会話をしないという像を浮かべてしまいがちである。内閣府が2016年に発表したデータによると、15歳から39歳の引きこもりで「自室からほとんど出ない」と回答したのは0.0%、40歳から64歳では4.3%となっている。
本書のキーワードの一つに「多様性」が挙げられている。引きこもる人は男性もいれば女性もいて、10代もいれば60代もいる。引きこもるようになった理由も人ぞれぞれで、就活に失敗した、学生時代にいじめにあっていた、人間関係の問題など様々だ。引きこもりという問題に向き合うためには、必然的に多様性というものを考えなければいけないと久世さんは言う。
長引く引きこもりには親にも一因がある、と本書には書かれている。引きこもりは当人だけの問題だと思いがちだが、久世さんはその親にも問題があると述べている。引きこもりになったのは親の育て方が悪かったと思い込み、周囲の人や団体に頼れない親、自分が一番子供のことを理解しているという勘違いから、アドバイスを聞く耳を持たない親など引きこもりを解決するために、親が障害になっている事も多いそうだ。親と関りがない引きこもりはほとんどいないため、親が正しく行動できれば次のステップに進むことが出来る人も多くなるはずだ。
「引きこもり」という問題の実態について、正しい知識を持っていない人は私も含めて、多いのではないかと思う。本書で若い世代の引きこもりはこれから減っていき、中高年引きこもりは2030年ほどまでにピークを迎えると考えられている。本人だけでなく周りの人たちが正しい知識や支援の仕方を学ぶことが、引きこもりと言う問題を解決する糸口になるかもしれない。
(815文字)
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