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C1220242 石澤日和さん (8t5ex9uk)2023/7/26 22:24 (No.858148)削除高校中退は誰の問題か――青砥恭『ドキュメント高校中退―いま、貧困がうまれる場所』(ちくま新書、2009年)
皆さんは「高校中退」と聞いてどのような人物像を思い浮かべるだろうか。事件を起こす非行少年か、はたまた怠惰で成績の悪い高校生か。そのような中退者がいないわけではないだろう。しかし、高校中退の問題の本質は高校生本人の力ではどうすることもできない「貧困」である。
貧困は子どもの学習に大きな影響を与える。親は貧困ゆえに余裕がなく子どもに関心がない。そのため高校生になっても基本的な生活習慣さえ身についていない場合もある。著者は実際に、歯を磨く習慣がない生徒やバランスの悪い食事しかしていない生徒を見てきたそうだ。こうした状況ではたとえ義務教育が無償であっても満足に学習できないことは容易に想像できるだろう。しかし、中学校を卒業した後すぐ就職することは難しい。ほとんどの中学生が高校へ進学する。貧困家庭の生徒たちも「みんな行くから」、「高卒資格が欲しいから」といった「仕方がないから」ともとれる理由で、低い学力でも入学できる場所、いわゆる「底辺校」へ進学していく。
希望のない進学、逃れられない貧困のため、義務教育ではない高校を辞める生徒は多い。進学した先は社会では「底辺校」と呼ばれている場所で、生徒自身が自分を底辺の人間だとカテゴライズしてしまう。このような囲い込まれた環境で勉強の意欲など湧くはずがない。学校側も、すべての生徒に対して学習支援をできる余裕はない。ましてや生活習慣から教えることはできないため、学校の秩序を守るためにはその枠に当てはまらない生徒には辞めてもらうほうが都合が良い。こうした背景から、底辺校ほど中退率が高い。中退した後に貧困を抜け出せる可能性はかなり低く、貧しいままに過程を持ち、貧困が連鎖していくのである。
こうした高校中退がなぜあまり注目されていないのか、子どもの貧困の実態はどのようなものか、興味が湧いた方にはぜひ本書を手に取ってほしい。タイトルの通りドキュメント調で実例が紹介されているため、重いテーマだが読みやすい本である。本書を通して、著者とともに高校中退という社会の問題ついて考えてみてはいかがだろうか。(868文字)