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C1200794 木村凌斗さん (807ugh8z)2021/7/27 21:08 (No.237878)削除知らない性風俗の世界
坂爪真吾,『性風俗のいびつな現場』筑摩書房,2016年1月1日出版
著者坂爪慎吾さんは、主に「性」の問題を取り扱っている。新しい「性の公共」をつくるという理念の下、障害者に向けた性のサービスや、風俗産業の社会化を目指すサミットなどを開催したりなど、社会的な切り口で現代の性問題の解決に取り組んでいる。その経験に基づいた理念は『性風俗のいびつな現場』を読むと強く伝わってきた。
当書を読むにあたり、読み初めで受ける印象と読んでからの印象は全く違うものになっていく。初めは、。妊婦・母乳専門店の需要、激安風俗店のもたらした影響や、客層や、風俗レポや、風俗店の経営者の軌跡、営業中の裏側など、男性目線、お店目線で語っている部分が大きい。しかし、読み進めていくにつれての印象は正反対である。その風俗店舗で働いている女性達はなんらかの問題を抱えている。貧困、シングルマザー、知的障害、など、可視化できるものから可視化できないものまである。その中で、ある激安風俗店は、「デブ、ブス、ババア」を売りにする風俗店がある。このキャッチフレーズを聴く限りは極めて差別的で、反社会的に思えるかもしれない。しかし、その実態は限りなくソーシャルワークに近い風俗、もしくは限りなく風俗に近いソーシャルワークに近い。時には風俗店のスタッフと一緒に市役所に行ったり、泊まる場所のない女性が店の待機部屋に宿泊させたりなど、雇用関係という言葉一つでは語れないのではないだろうか。だが、この関係性ではお店が女性に施すことばかりでメリットがないように思える。だが、実際のところお店にもしっかりとメリットがある。女性の生活レベルの向上、メンタルの安定は、店への出勤率の高さ、接客レベルの向上に繋がると考え、結果的には利益に繋がったりなどwin-winな関係性である。
「風俗」のイメージが根底から覆される『性風俗のいびつな現場』は常に飽きさせず、読んでいてためになる。
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