NPO・NGOの現場からうまれた文献のbook review

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滝口克典さん (8e7vk6zw)2022/7/15 14:55 (No.473979)削除
商店街はよみがえる?――斎藤一成『100円商店街の魔法』(商業界、2010年)

 中心市街地活性化事業「100円商店街」。要約すると、商店街全体を一つの「100円ショップ」に見立て、そこに位置する全店舗で店外に100円コーナーを設置し集客を図るという商店街活性化の取り組みである。街全体が会場とも言えるため、ユニークな100円商品――「こんなものもあんなものも100円!」――を求めて、客足は商店街の隅々まで及び、さらには個店の店内にまで伸びる。
 これまで全国各地の40以上の商店街で実施され、現在もなお開催地を拡大し続ける、この感染力ゆたかな企画は、もとは、新庄市で商店街まちづくりに取り組む市民団体「NPO‐AMP」(2003年発足、現在はNPO法人)が発案したもの。本書は、新庄市役所職員でありながら、同法人理事長でもあるという「二足のわらじ」スタイルを実践する著者自らによる「100円商店街」入門である。
 そもそも商店街とは、地域社会の生活基盤といえるもの。現在は郊外大型量販店に押されまくっているが、仮にそれらが撤退した場合には、地域の人びとにライフラインを提供できるのは地元の商店街以外にない。当然、商店街の存在意義は「商い」であるから、その存続には個々の商店の収益増大が不可欠である。とはいうものの、従来の行政主導まちづくりは、補助金を使ったイベントで集客には成功するものの、それを商店街の収益につなげることには失敗し続けてきた。
 「100円商店街」がユニークなのはまさにこの収益増大の達成という点だ。補助金には頼らず、自分たちの街は自分たちで何とかしていこうという気概。その上で、店主たちのやる気を巧みに引き出し、それぞれが創意工夫に乗り出しやすい環境を整える。お茶屋の「抹茶シフォンケーキ」や理容店の「眉毛カット券」など、ユニークな「100円商品」群はその結晶だ。
 山形発の価値が全国区でも高い評価を得る機会が重なっておきた「山形現象」。まちづくり版「山形現象」の全貌がここにある。(809字)
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c118059A 奥山泰地さん (80i0nddi)2021/8/3 23:59 (No.242499)
引きこもり生環境  池上正樹
この本の中で、周りとの会話、コミュニケーション、を取れずにその場に居たくなくなってしまい結果20代後半になるまで引きこもりを患ってしまい、それに見かねた親が子供を殺害すると言う痛ましい事件を取り上げていた。私はこの事件に心に感じるところがあった。私も中学生の頃にイジメを受けていたことがあった。明確なイジメではなかったが教室全体の空気で私自身も何となくハブられていると感じる時ぐなんとなくわかってしまう。担任の先生や自分の立場が危うくなってしまう時にはいつもイジメている人はさりげなく話しかけたりと上手く立場をつくっていた。登校する時も私が来た時も露骨に静かになり毎日私は登校したくない気持ちがありました。この時もしかたら私もこのような事件を起こしかねないかもしれないと思った。私も一度は引きこもりを考えた、さっきもあった通り私は毎日登校することが嫌になりケラスメイトに会いたくない気持ちでいっぱいになった、だがそれよりも私は家族が大好きであり、親を心配させたくない、傷つけたくないと言う心を強く持ち、なんとか中学校を卒業することができた、その後の高校、今の大学では人側に恵まれてだおかげでとても楽しい学生生活を送ることができている。当時はとても弱気だった自分で自ら行動することも特になかった。だが大学に入ってから自ら行動するようになり、アルバイトも始めるようになれた。当時の私では考えられないと今でも思っている。時々あの当時のことを思い返すことが何度もある、そのたびに私はなぜいじめられたのか、原因は些細なことだったのだなと思ったりもしている。実はイジメをしていた人は小学校の時は普通に遊んでいた時があったのだ、だが中学校に上がったときに些細な事で仲がこじれそこからイジメに繋がってしまった、もし、あの時に戻れるなら親や先生、色々な人に相談をするべきだったと思った。この本は沢山の引きこもりの事例を紹介して、なぜは引きこもりになってしまったのか明確に書かれている。
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C118059A 奥山泰地さん (80i0nddi)2021/8/4 00:07
出版社、出版年を忘れてしまいました。ここに書き直します。
題名の書き方も間違えてしまっていました。そちらも書き直します。

池上正樹 「引きこもり」生還紀 
支援の会活動報告
(小学館 2001年)
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C1200995  齋藤波奈さん (80i0ol9q)2021/8/4 00:00 (No.242507)
藤田孝典『貧困世代 社会の監獄に閉じ込められた若者たち』(講談社現代新書、2016)
著者の藤田氏は埼玉県在住で社会福祉士をしている。ルーテル学院大学大学院総合人間学研究科博士前期課程を修了し、NPO法人ほっとプラス代表理事を務めるほか、聖学院大学人間福祉学部客員准教授、反貧困ネットワーク埼玉代表として活動している。またブラック企業対策プロジェクト共同代表や、2013年には厚生労働省社会保障審議会特別部会員も行っていた。著書に『ひとりも殺させない』(堀之内出版)、『下流老人一億総老後崩壊の衝撃』(朝日新聞出版)等がある。
藤田氏はこの本の中で今日の若者たちが過ごす生活環境が悪化していることに触れ、現代社会において若者を取り巻く様々な社会問題が、若者を貧困へと追い込んでいるとし、若者たちに対する人々の目線が高度経済成長の時のままで止まっているのではないかと問題視している。高度経済成長期人々は労働に励めば報われるのが基本であり、その賃金は年功序列であるため、結婚して妻を養い、子どもが生まれて家族を養うシステムができていた時代だった。しかし現状は、本書2,3,4章で述べられている通り、若者たちはさまざまな要件によって苦しめられている。このような問題意識が今後の社会と若者の状況の改善につながることを願う。
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小林 龍永さん (80i0kgn2)2021/8/4 00:00 (No.242501)
世界の主催者は誰?――湯浅誠、『ヒーローを待っていても世界は変わらない』(朝日新聞出版、2012年)

この本では、民主主義の社会においてヒーローという役割を担う「誰か」を渇望しながらも自分の思い通りの世界を望む人々の現状と解決策を多視点から根拠立てて描いています。課題を解決しようとする時に結果をすぐ求めてしまいますが、実はその過程の調整作業が最も大切な部分です。民主制において様々な意見が寄せられる中で、それらの意見を調整する役割を担う存在が必要であり、その存在を担う人をヒーローといった立ち位置にし責任を押し付けられるのが現状です。こういった社会構造を改善していくためには、多くの人々がノウハウを持つことの重要性に目を向けなければなりません。
海外ではオバマ大統領がシカゴのスラムでのコミュニティ・オーガナイザーとして人と人とを結びつけるコミュニティ作りに励んでいたノウハウを活かし、大統領選に臨んだという話があります。この事例から分かるのはコミュニティを作るためにはノウハウの蓄積が必要であるということです。そして日本にはノウハウの蓄積が足りないことを認められない文化があり、その事実を受け止めることを恥じないで前向きに取り組むことが大切になってきます。ノウハウというのは、経験です。様々な経験をした(ノウハウの蓄積がある)人がリーダーとして課題に向き合うことで、支えているか支えられているのか分からない地域・社会の人々の課題解決に対する力を高めていくことに繋がっていくのだと思います。そして、そこに便乗した人々は支え、支えられる「お互いさま」の状態で課題に立ち向かっていくようになります。
そういった経験を重ねた人々はヒーローを求める側の気持ちに寄り添いながら共に挑戦していけるようになり、「自分たちでなんとかするマインド」が常識的に備わるようになります。ヒーローはどこかにいるのではなく、自分達自身がヒーローなのだという考えを持ちながらチャレンジしていくことだけが社会を良くしていくのだと感じました。(802文字)
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C1200908 小林龍永さん (80i0kgn2)2021/8/3 23:59 (No.242495)
この本では、民主主義の社会においてヒーローという役割を担う「誰か」を渇望しながらも自分の思い通りの世界を望む人々の現状と解決策を多視点から根拠立てて描いています。課題を解決しようとする時に結果をすぐ求めてしまいますが、実はその過程の調整作業が最も大切な部分です。民主制において様々な意見が寄せられる中で、それらの意見を調整する役割を担う存在が必要であり、その存在を担う人をヒーローといった立ち位置にし責任を押し付けられるのが現状です。こういった社会構造を改善していくためには、多くの人々がノウハウを持つことの重要性に目を向けなければなりません。
海外ではオバマ大統領がシカゴのスラムでのコミュニティ・オーガナイザーとして人と人とを結びつけるコミュニティ作りに励んでいたノウハウを活かし、大統領選に臨んだという話があります。この事例から分かるのはコミュニティを作るためにはノウハウの蓄積が必要であるということです。そして日本にはノウハウの蓄積が足りないことを認められない文化があり、その事実を受け止めることを恥じないで前向きに取り組むことが大切になってきます。ノウハウというのは、経験です。様々な経験をした(ノウハウの蓄積がある)人がリーダーとして課題に向き合うことで、支えているか支えられているのか分からない地域・社会の人々の課題解決に対する力を高めていくことに繋がっていくのだと思います。そして、そこに便乗した人々は支え、支えられる「お互いさま」の状態で課題に立ち向かっていくようになります。
そういった経験を重ねた人々はヒーローを求める側の気持ちに寄り添いながら共に挑戦していけるようになり、「自分たちでなんとかするマインド」が常識的に備わるようになります。ヒーローはどこかにいるのではなく、自分達自身がヒーローなのだという考えを持ちながらチャレンジしていくことだけが社会を良くしていくのだと感じました。(802文字)
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匿名さん (80i0k1zo)2021/8/3 23:57 (No.242484)
中村智志『命のまもりびと 秋田の自殺を半滅させた男』(新潮文庫、2017年)

 この本では、佐藤久男さんが立ち上げたNPO「蜘蛛の糸」の活動やそれに至った経緯などを記したものとなっている。「蜘蛛の糸」とは経営に行き詰まり精神的に追い込まれたり自殺を考えている経営者などに対して精神的立ち直りや社会的復帰を目的としたNPOである。佐藤久男さん自身も経営者であり、自殺未遂者でもある。長年の優れた経営経験とそれでもかなわなかったことへの無力さ、不条理さを体験した佐藤久男さんだからこそ多くの相談者を助けることができたのだろう。構成としては実際の相談者への活動、幼少期から秋田県の自殺を半減させるに至るまでの経緯、東日本大震災被災地での活動といった三つに分けられる。藤久男さんの支援の仕方としては肩を貸して歩かせる、というものではなく歩けるようになるまで一緒に待つといった非常に根気のいる方法で行っている。これを実現できるのはひとえに佐藤久男さんの人柄が可能にしている。その人柄は本書にも随所に現れており、ゆすりににきたヤクザと打ち解けるエピソードや秋田県知事からの理解を得るエピソードは特に佐藤久男さんの人柄の良さを表していると思う。また行動力にも目を惹かれるものがある。普段は来る人を待つというような活動の仕方をしている佐藤久男さんだが、東日本大震災を見た時では自ら足を赴き活動していた。このように優しさが目立つ佐藤久男さんだが怒りをあらわにした場面である。それは「蜘蛛の糸」を設立する前のことである。経営者仲間の自殺を聞いたその時の佐藤久男さんは社会構造に怒りを抱いていた。しかし具体的に向けるものがなく焦燥感を感じるとともに使命感も同時に感じていた。そこで生まれたのが「蜘蛛の糸」である。このとき佐藤久男さんはまだ精神的に不安定な時期であったが個人的にはこれが功を奏したのではないかと思っている。この気持ちがなければ多くの人は救われることなく社会の隙間に落ちていっただろう。 (828字)
匿名さん (80i0k1zo)2021/8/3 23:59削除
c1180896 小松幸太郎
すみません、氏名を入れるのを忘れました。
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小林 龍永さん (80i0kgn2)2021/8/3 23:57 (No.242486)
この本では、民主主義の社会においてヒーローという役割を担う「誰か」を渇望しながらも自分の思い通りの世界を望む人々の現状と解決策を多視点から根拠立てて描いています。課題を解決しようとする時に結果をすぐ求めてしまいますが、実はその過程の調整作業が最も大切な部分です。民主制において様々な意見が寄せられる中で、それらの意見を調整する役割を担う存在が必要であり、その存在を担う人をヒーローといった立ち位置にし責任を押し付けられるのが現状です。こういった社会構造を改善していくためには、多くの人々がノウハウを持つことの重要性に目を向けなければなりません。
海外ではオバマ大統領がシカゴのスラムでのコミュニティ・オーガナイザーとして人と人とを結びつけるコミュニティ作りに励んでいたノウハウを活かし、大統領選に臨んだという話があります。この事例から分かるのはコミュニティを作るためにはノウハウの蓄積が必要であるということです。そして日本にはノウハウの蓄積が足りないことを認められない文化があり、その事実を受け止めることを恥じないで前向きに取り組むことが大切になってきます。ノウハウというのは、経験です。様々な経験をした(ノウハウの蓄積がある)人がリーダーとして課題に向き合うことで、支えているか支えられているのか分からない地域・社会の人々の課題解決に対する力を高めていくことに繋がっていくのだと思います。そして、そこに便乗した人々は支え、支えられる「お互いさま」の状態で課題に立ち向かっていくようになります。
そういった経験を重ねた人々はヒーローを求める側の気持ちに寄り添いながら共に挑戦していけるようになり、「自分たちでなんとかするマインド」が常識的に備わるようになります。ヒーローはどこかにいるのではなく、自分達自身がヒーローなのだという考えを持ちながらチャレンジしていくことだけが社会を良くしていくのだと感じました。(802文字)
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C1190908 寒河江由唯さん (80i0cngk)2021/8/3 23:51 (No.242471)
学校と地域が子供を守る――大谷尚子・白石草・吉田由布子 3.11後の子どもの健康 保健室と地域に何ができるか(岩波ブックレット2017年)

 この本は、保健室や養護教諭の実践を研究している大谷尚子、チェルノブイリの子どもの健康問題を調査し続ける吉田由布子、そして福島原発事故後の子どもたちをめぐる、市民から行政までさまざまな動きを取材する白石草によって作成された。この三人は子どもたちの健康を不安に感じ守りたいという思いを持っている。福島第一原発事故後の周辺地域では、食料や土地は安全であるのか、放射線がどんな健康被害を与えるのかわからないまま生活をしていた。事故後しばらくの間、放射能から身を守るため、県内の多くの学校で屋外活動が制限され、子どもたちの間にストレスがたまるなどした。そうした人々を支えようと立ち上がったのが養護教諭である。保健だよりには彼女らの思いが詰まっている。放射線を減らすための畑づくりや調理法、放射線量の情報の提供、放射線についての基礎知識などを盛り込んだ。放射線測定の充実、防災体制の充実を地域へ交渉・要請、学校の環境整備、地域住民との協働など、子どもたちのためにできることに全力を尽くしてきた。
 原発事故により、学校問題だけでなく、人間関係の問題、家庭問題、失業なども見られた。多くの子どもたちが家族との別離を体験していた。また、両親の間にすれ違いが起こり、離婚に発展している家庭もあった。それにより、自分の居場所を失い、問題行動を起こす思春期の子どももいた。一方学校生活では「友人の転出」と「少人数で生活」を余儀なくされていた。しかし、すべての子どもに目を向けることには限界があった。国を動かすために国に対して、勧告や提言を行う動きもあった。
 この本を読んで、事故後どれだけ地域や学校が子どもたちを守ろうと動いたのかを知った。10年経った今でも私たちにできることはあるのだと感じさせられた。(731字)
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c1191670高橋快晴さん (80i09hls)2021/8/3 23:49 (No.242468)
「社会で生き抜くひとり親の状況」(赤石千衣子 『ひとり親家庭』 岩波新書、2014年)
私がこの文献を選択した理由に、親が離婚するかもしれないと友人から直接相談された際には、私自身無知であった為ただ話を聞くのが精一杯であったことがあり、私も向き合いたいと考えたからだ。作者である赤石千衣子さん自身が日本社会において一人親家庭の生きづらさについて当事者として記す事で、友人や友人の親を含め日本には多くの支援を必要としている人々がいるのだなと考えさせられた。日本のひとり親家庭全体が、これまで家事や育児を担う女性の稼得能力は低く、ひとり親家庭の貧困は改善されないまま生活を苦しく続けてきた。更には1990年代から経済的な不況にさらされ、それ以来、非正規化や不安定就労が増え、日本の都市部などでは夫の収入は減った結果、働かざるを得ない子育て中の女性が増え待機児童が増加した。更には、普段の仕事では収入が少なく満足の行く生活が出来ない女性がキャバクラや性風俗店で働いてしまう女性も増えてきたのが現状である。私個人の意見ではあるが、水商売をやり甲斐に感じ好きな仕事として働く女性がいることに対して偏見の目で見る人がいる事に違和感を感じます。当たり前にその仕事が無ければ生活出来ない人々が多くいるからです。それ以前に学歴社会となっていることが原因であるとも考えます。この文献で特に関心を持ったのが、親の貧困は子どもの貧困に繋がってしまう点だ。パート社員として働いていた女性が、保育所に通っている息子の迎えを保育所の閉まる18:00までに迎えに行かなければならないのですが、上司に社員と同じように働けなければ契約を解除すると脅され、定時の17:00に帰宅することが出来なくなり、息子の迎えを家族に頼んでしまう事になった女性がいたことだ。日本社会が良くないと言いませんが、残業が当たり前となっている事に対して腹立たしく感じますし、一人親で尚且つパート社員に対して厳しく当たってしまう事に対しても、非正規雇用の在り方がもっと考えられるべきだと考えました。社会としてこの問題にどう付き合っていくことが正しいのかもっと考えるべきだと感じた。(858字)
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c1180637 小野寺李央さん (80hznbi6)2021/8/3 23:35 (No.242448)削除
不倫をなくす方法――坂爪真吾『はじめての不倫学 「社会問題」として考える』(光文社新書、2015年)
 この本では、誰にでも起こり得る社会問題としての不倫をテーマに書かれている。本書では不倫を「個人の問題」としてではなく「社会の問題」として考えている。様々な要因が複雑に絡み合って起こってしまう不倫を、現代社会における現実や不倫の心理学、歴史的な観点など、多数の目線から読み解いている。
 本書では、不倫をインフルエンザのような感染症だと捉えている。その感染症を防ぐための不倫ワクチンの開発を試み、そのワクチンの在り方を考えていくのが本書である。本来のワクチンの原料は、病原体そのものを弱めたり、無毒化したものである。つまり不倫ワクチンとは、「中毒性の低い疑似不倫体験」あるいは「リスクの少ない、制度化された婚外セックス」のことを指す。婚外セックスやポリアモリー(責任をもって、同時に複数の相手と恋愛関係(性的関係を含む)を結ぶこと)の実際の経験者の意見なども交えながら、不倫ワクチンとはどういうものなのかを考えていく。
 著者の坂爪真吾さんは一般社団法人ホワイトハンズの代表理事をしている方である。新しい「性の公共」をつくるという理念の下、社会的な切り口で現代の性問題の解決に取り組んでいる。重度身体障害者に対する射精介助サービス、風俗店で働く女性のための無料生活・法律相談事業「風テラス」などを運営し、性風俗産業の社会化を目指す「セックスワーク・サミット」の開催など、性に関する様々な事業を行っている。
 この本では、不倫を個人の色恋沙汰やモラルの問題として片づけてしまう視点から脱し、社会の問題だとして捉え直している。著者の不倫への考え方は、賛否両論あるだろう。だが本書を読むことで不倫への見方はきっと変わり、予防と回避の方法を考えていく機会になるのではないだろうか。(729字)
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