NPO・NGOの現場からうまれた文献のbook review

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C1191925 巴美聡さん (80f1f78a)2021/8/1 21:58 (No.240472)削除
中村智志『命のまもりびと 秋田の自殺を半滅させた男』(新潮文庫、2017年)

 この本の著者の中村智志氏は、1964年東京都生まれである。上智大学文学部卒業後、朝日新聞社に入社した。その後、東京本社社会部や「週刊朝刊」編集部、教育総合本部などを経て、2017年に日本対がん協会に勤務した。1998年には『段ボールハウスで見る夢』で講談社ノンフィクション賞を受賞した。他の著書として、『新宿ホームレスの歌』や『大いなる看取り』がある。また、2014年には『あなたを自殺させない』が城山三郎賞にノミネートされた。
 書籍の内容として、秋田県は長い間、人口10万人当たりの自殺者数が47都道府県でワースト1位という記録した。秋田県の自殺者数は過去最高で500人以上である。その多くが、自営業者となっている。このような中で、ある1人の男性の自殺防止の実践が長年にわたり、ピーク時の半数近くまで減らすことに成功した。その人物が、この本に登場する佐藤久男氏である。彼自身も、会社の倒産やうつ病に悩まされたという、とても絶望的な経験を持っている。しかし、彼はそこで諦める道(=自殺)を選択せず、これらの経験を活かし、NPO法人「蜘蛛の会」を立ち上げた。この会社は、倒産に向き合う経営者向けの相談所として設けられた。佐藤氏は「ゆっくり、きっちり、じっくり」をモットーに相談者の話を受け入れ、アドバイスをする。この書籍の物語では、上記のような佐藤さん自身の経験や取り組み、そして「自殺」に向き合った自営業者の人たちの記録として描かれている。
 自殺率ワーストの地で、佐藤さん1人の力だけでなく、秋田県庁や秋田大学などもこの問題に携わったという意味の「民・学・官の連携」。このトライアングルの活動成果が自殺者数を半滅につながった。この活動を「秋田モデル」と呼ばれ、全国に影響を与えた。体験談をもとに描かれているため、自殺を考える中での葛藤や苦悩などを実感することになる。それとともに、「支え」というのが生きていく中で、どれほど大切なことであるかも踏まえ、この本では紹介され語られている。(822字)
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C1190647さん (80eyujs5)2021/8/1 20:46 (No.240399)
ヤマガタのありかた--山之内悦子『諦めない映画 山形国際ドキュメンタリー映画祭の日々』(大月書店、2013年)

あなたは山形国際ドキュメンタリー映画祭(以後、ヤマガタ)ご存じだろうか。あまり有名な映画祭ではないけれど、1989年から続いており今年で23回目を迎える。この本の作者山之内悦子さんは翻訳者でありカナダで生活している。ヤマガタは資金不足のため渡航費は出してもらえないが、第1回目から毎年参加している。なぜ山之内さんはわざわざカナダからヤマガタに来るのか。存続が危ぶまれるヤマガタはなぜ続けられているのかが分かる気がした。

第1章では通訳者のあり方の概念を覆す内容が書かれている。映画が上映された後にその映画監督が観客やメディアからの質疑応答の時間があるのだが、ドキュメンタリー映画のため悲惨な歴史や現実の映画も少なくない。アイヌ人族についての映画で監督本人がされてきた差別の経験を語った。内山さんは同時翻訳をしなければならないのにステージの上で泣いてしまった。通訳者は黒子であり、無色透明の通訳をしなければならないのが通訳業界の常識であるように思われる。しかし、翻訳者も人間であるから感情を表に出してしまってもヤマガタでは許されてるのみならず、むしろ好まれる場所のようなのだ。観客やメディアの方誰一人冷たい視線を送らず、声を震わせながら翻訳する山之内さんを温かい目で聞いてくれた。

観客を笑わせようとジョークやダジャレを交えて話す監督もいるらしい。ジョークやダジャレを翻訳するのは難しいことであるため、「今のジョークは、通訳不可能です。でもお願いですから私と一緒に笑ってください。」と観客に笑ってもらったことがある通訳者もいたそうだ。

私はこの山之内さんの2つの体験からヤマガタはとても人間味あふれる映画祭だと感じた。世界中から1000本近く応募があるヤマガタがどれだけ愛されているのか、実際に観客として参加したくなる本になっている。
(756文字)
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c1200601 柿崎穂さん (80esxdin)2021/8/1 18:00 (No.240286)
不倫しないためのワクチンを--坂爪真吾『初めての不倫学「社会問題」として考える』(光文社、2015年)

 この書籍の著者は、一般社団法人ホワイトハンズ代表理事の坂爪真吾氏である。ホワイトハンズでは、重度身体障害者に対する射精解除サービスや性風俗産業の社会化を目指す「セックスワークサミット」の開催を行っている。

 坂爪氏はこの本で不倫をインフルエンザのような感染症であると定義し「誰にでも突然起こる可能性がある」としている。そして著者が問題としているのは不倫が誰でもなりうる感染症であるのにも関わらず、不倫した人に対して世間一般は「努力がたりない」「自己責任だ」というバッシングをすること、同じ感染症であるインフルエンザのようにワクチンが存在しないことだ。この本では、人が不倫しないための「不倫ワクチン」となる新しい考え方を提示している。

 本のなかで取り上げられている不倫ワクチンの一つに「婚外セックス」がある。性に関する意識が一致しないことが不満となり、それが不倫の原因となることが多い。よって婚外恋愛を伴わない婚外セックスによって夫婦の不満を解消することが対策といえる。あくまでも夫婦生活(家庭)が最優先でありお互いに話し合ってルールを決めることが鉄則である。

 またもう一つ取り上げられているのが「オープンマリッジ」だ。これは夫婦がお互いを社会的、性的に独立した個人として認め合い、お互いの合意の上で自由に愛人をつくることができる結婚のスタイルのことだ。つまり、婚外セックスを前提とした夫婦関係である。もちろんオープンマリッジの最終的なゴールは婚外セックスをすることではなく、婚外セックスを経て夫婦関係をより密接にすることである。夫(妻)とは違う人と関係をもつことによって結果的に「お互いの成長」につながるという考え方だ。

 この本ではそのほかにも「不倫を予防するためのワクチン」が発明されている。読んだ人は不倫がどうやったらなくなるのかが少しでもわかるかもしれない。  (824字)
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C1192706 佐藤奈々さん (80esx1zw)2021/8/1 18:00 (No.240284)削除
自然エネルギーを増やすために――古屋将太『コミュニティ発電所-原発なくてもいいかもよ?』(ポプラ社、2013年)

 「地域のみんなが本当に安心して安全に使えるエネルギーをみんなの手でつくりあげるんだ!」という思いで、各地でプロジェクトが立ち上げられている。古屋氏は、そういったプロジェクトの立ち上げに必要なノウハウを伝え、場合によっては当事者の一人になり、自然エネルギーに転換する活動に取り組んでいる。
 「原発は危険そうだから、なるべくないほうがいいなあ」と思いつつ、「でも本当になくすことはできるのかな?」と疑問に思っている人は多いだろう。その答えは、「可能」である。実際に普通の市民が原子力に頼らない発電所をつくり、その電力を用いてごく普通に生活を営んでいる例がある。そして、そのために必要なのは、“コミュニティ”の力。本書では、従来の巨大発電所に代わる“コミュニティ発電所”を提案する。
 たとえば風力建設をする場合、4000世帯分の風力をまかなう風車1基は約5億円。高いが原子力ほどではない。4000世帯が十数万円ずつお金を出し合えば建設できる。つまり、自然エネルギーは個人、ご近所さん、市区町村単位の規模で導入できるのである。更に、自分たちの発電所で得られる売電収入は自分たちで分配できる。みんなに利益がまわるのである。このような地域レベルでの小さな発電所はすでに日本全国にいくつもできており、どれもその地域に住む人たちが集まって計画を立て、資金を集め、運営に関わっている。
 現在、自然エネルギーには「太陽光」「風力」「小水力」「地熱」「バイオマス」があり、いずれも自然環境に与える負荷が少なく、適切な範囲で利用すれば使ってもなくなる心配がない。また、自然エネルギーは持続可能であるというだけでなく、発電の構造が原子力や火力と違ってシンプルであり、必ずしも広大な敷地を必要としない。地域での自然エネルギーづくりに関わる方法、入り口はたくさんある、思いきって一歩踏み出してみようではないか。
 3.11や温暖化により関心を持つ人も増えたエネルギーのつくり方。「本当の豊かさ」について見つめ直すきっかけとなるだろう。(842字)
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C1190073 阿部尚人さん (80elqaf3)2021/8/1 14:38 (No.240108)
日本社会に潜む働きすぎの習慣――川村遼平『若者を殺し続けるブラック企業の構造』(株式会社KADOKAWA、2014年)

 「一人の人間が命を失うのは、家族にとって、会社にとって、社会にとって、大きな損失です。だれもが、今、命の大切さを思い、命が大切であるべきだと宣言すべきだと思います。」これは大手飲食店に勤めていた20代の娘を自殺で無くした父親の言葉だ。
過酷な労働を強いる「ブラック企業」の問題は現代の人々なら一度は聞いたことがあるだろう。ブラック企業の問題の中でも近年「若者を使い捨てにする企業」や“働きすぎ”による「若年過労死」の問題が後を絶たない。実際に過労死事件のほとんどが表面化せず、メディアで取り上げられる事件は、ほんのひと握りである。
この問題に取り組んで来たのがNPO法人POSSEである。POSSEでは相談窓口を設けて労働問題や生活に関する相談を無料で受け付け、働く人々の支援を行なっている。著者である川村遼平さんはこのNPO法人の事務局長を勤めている。本書では、日本社会で当たり前となっている“働きすぎ”という言葉をキーワードに日本の働き方を問い直し、これからどの様な対応が望まれるのか示されている。
そもそもブラック企業がいつまでも無くならない原因を考えた事があるだろうか。原因の全てが企業の労務管理や“働きすぎ”を押し付ける上司の存在にあるとは言えない。
この問題の背景には「ブラック企業」が登場するさらに前からある雇用慣行、社会保障や教育、家族の在り方など、日本社会全体が“働きすぎ”を当たり前のものとしていること。また「労働基準法」や「過労死ライン」あるにも関わらず、残業を無限にさせても違法にならない抜け道である36協定や日本でほとんど唯一“働きすぎ”を抑制していた残業代の発生も「裁量労働制」により抑制され、法律や制度でも“働きすぎ”が容認されている事実がある。
問題を解決するには日本社会の「当たり前」変えていく必要がある。それは困難で時間が掛かるが不可能ではない。私たちにできることは、1人でも多くの人が次の犠牲者を出さないための取り組みに参加することが求められる。まずはNPO団体の行なっている署名に参加することやそれらの取り組みに目を向けることが社会を変える第一歩になる。(876文字)
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c1191960 中野竜さん (80ektfvf)2021/8/1 14:13 (No.240095)削除
譲渡を目的とした猫カフェ「保護猫カフェ」―― 山本葉子、松村徹 『猫を助ける仕事』(光文社新書、2015年)

猫ブームに隠れた残酷な殺処分の現状には「愛情」だけでは解決することが出来ないとNPO法人東京キャットガーディアン代表の山本葉子は主張する。行政によって殺処分される犬・猫の数は年間あわせて数十万匹に上る、家族の一員として迎えられたペットが殺処分されるという「不適合」に対し山本さんは「システム」を変えて猫と人間が住みやすい社会へと変える活動を行っています。
2013年に改訂された動物愛護管理法などの法規制では年間数十万匹にも上る殺処分数を防ぐのには十分ではありません。日本では行政施設からの動物の譲受よりも、ブリーダーやペットショップから購入するケースが圧倒的に多く、これらがペットの殺処分を増やしているのではないかと著者は考えています。
山本葉子さんが代表を務める東京キャットガーディアンでは社会的システムを変えて民間の保護団体からペットを譲り受ける新しい流通システムを作り、猫の殺処分数をゼロにしようとしています。取り組みに多く共通点している点としては猫と人の共通点を増やす事、具体的には飼い主がいない猫たちの里親を探すための場所作りです。開放型シェルターと呼ばれる、譲渡会場、保護猫カフェ、猫関連グッズのショップの役割を同時に担うスペースを提供しています。
保護猫カフェとは猫カフェとは違い、飲食物を一切提供せず、猫の譲渡を目的としています。
可能な限り里親と猫との接点を作ることにこだわる山本さんは施設を常設しておりこのことから動物への愛と殺処分数をゼロにしたいという強い思いが感じ取ることが出来ます。
山本さんの活動はソーシャルビジネスと呼ばれ、社会問題の解決を企業、住民、NPOなどが協力して解決していくビジネス形態です。利益を重視する企業、ボランティアとも違い、自分の会社で収益を上げて、その収益を使って社会支援を行う事です。
この本を通して資金を賄えないボランティア活動に可能性を見出すことが出来るのではないのかと思います、
(808字)
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C1181708 外舘恭輔さん (80e2sga6)2021/8/1 05:48 (No.239937)削除
放射線から子供を守る---大谷尚子・白石草・吉田由布子 3.11後の子どもの健康 保健室と地域に何ができるか(岩波ブックレット2017年7月5日)
東日本大震災で東京電力福島第一原子力発電所事故が起きたのは2011年3月11日である。これまで原子力発電所の事故は日本ではなく、日本では事故後の対策などが教育されていない状態だった。しかし、3月11日の事故で日本は津波や地震だけではなく、放射線の危機にも晒された。この本では、3月11日直後、東北の被災地で、ライフラインが途絶え、人々は放射能汚染についての情報を持たないまま、水や食料などを求めて屋外に出ている危険な生活から子供たちの健康を守るために、保健室や地域の方々が立ち上がった話が書かれている。
著者らは、宮城県大崎市大崎地区小学校の松田千恵子さんの放射線から子供たちを守るため安心させるための活動に目をつけた。
事故後、政府は「放射線はただちに健康に対する影響はない」と発表したが、松田さんは納得が行かず、小学校が臨時休業中に子供たちの安否を確認する為に校外巡視を行う同僚にマスクを配布したり、学校にある掲示板に「外遊びはしないようにしましょう。雨に当たらないようにしましょう。」などといった活動をした。更には、保健室の先生と協力して、保健だよりに放射線についての基礎知識を盛り込み、全校生徒、保護者、職員に配布した。これにより、「放射線って何?」「何ミリシーベルトって何をあらわすの?」「ベクレルって何?」などの声が届いた。そこで、インターネットで調べるように声をかけ、インターネットが繋がらない方々には、保健室に来てもらい一緒にインターネットで調べ、放射線について学んだ。さらに、学校内の放射線を自分たちで測定し、放射線量が多い場所をまとめ、近ずかないように呼びかけるなどして、子供や保護者の健康を守った。
当時、政府やマスメディアが事実とは異なる情報を流したり混乱を防ぐために嘘をついたり被災地を困らせた。その中でも松田さんのような人が居たからこそ、子供や保護者が安心して避難生活が送られ混乱が防げたのだと思う。(868字)
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C1191983 中村真也さん (80dxy8pk)2021/8/1 03:33 (No.239924)
若者の貧困ーー藤田孝典『貧困世代 社会の監獄に閉じ込められた若者たち』(講談社現代新書2016年)

 この本の著者である藤田孝典氏は、1982年生まれ埼玉県在住の社会福祉士である。彼は、ルーテル学院大学大学院総合人間学研究科博士前期課程を修了しており、NPO法人ほっとプラス代表理事や聖学院大学人間福祉学部客員准教授等を務める。著書には、『ひとりも殺させない』、『下流老人―一億総老後崩壊の衝撃』などがある。
 この本で藤田孝典氏は「若者の貧困」について取り上げており、現代の若者たちは一過性の困難に直面しているばかりではなく、その後も続く生活の様々な貧困を抱え続けてしまっている世代『貧困世代(プア・ジェネレーション)』と総称している。彼は、NPO法人でスタッフの社会福祉士として様々な若者たちの生活相談を受けていく中で、若者が自分だけの力で生活を再建するということが困難であることに気づかされた。
 ここでは、若者の貧困が絶え間なく続く要因として、彼らを取り巻く環境が劣悪であるということが挙げられる。大人が若者の貧困を理解しようとしていない結果、若者に対する勝手な価値観を押し付けてしまっていること。若者たちが、支援が必要な存在(社会福祉が必要な存在)だと認知されていない事実。「困ったら家族を頼る」ということが、当たり前の社会ではなくなったこと。労働環境の劣悪化を放置しながら、若者にただ努力を求めている日本社会。この本では、日本と諸外国を比較し、どれほど日本が若者支援に乏しい先進国なのかを明らかにしている。また、この若者支援が十分に行われない結果、少子化問題や人口減少といった問題にもつながってしまうのだ。
 大まかな内容として、第1章に若者たちが置かれている状況について、具体例を紹介しながら全体像の把握を行っている。第2章では、労働環境から派生する事象の背景について、社会福祉の視点から考えている。第3章では、「若者が学べない悲劇」として、ブラックバイトと奨学金問題を取り上げている。第4章では、「若者が住めない悲劇」を取り上げており、第5章では、社会がどのように若者たちに関わっていけばいいのかについて記述されている。(852文字)
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C1200096 安孫子大成さん (80dnzav8)2021/7/31 22:54 (No.239824)削除
ブラック企業から自分を守るために――今野晴貴『ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪』(株式会社文藝春秋、2012年)

「ブラック企業」というものが問題視され始めたのは2000年代からである。それまでは若者の労働問題は「フリーター」や「ニート」といったものが中心を占めていた。つまり、若者自身の意識の問題として捉えられてきたのである。しかし、企業側の問題にも目が向けられ始めたことで社会は少しずつ変わってきた。そうして「ブラック企業」という言葉が生まれた。
特に現代にはびこるブラック企業の持つ「やめさせる技術」は時代と共に高度化・複雑化しており、知識のない状態では簡単に騙されたり言いくるめられたりしてしまう。解雇ではなく辞職という形で会社を辞めることを強要されたり、中にはハラスメントを通して意図的に鬱病へと追い込むなど非人道的な行いが行われた事例もある。これから社会人となる人はもちろんのこと、現在正社員として働いているひとも自分の所属している会社がいつブラック企業へ変貌してしまうかわからないというリスクを抱えて生きていることを忘れてはならない。
また、ブラック企業は単に賃金や労働時間の問題だけではなく、「人間を破壊する」という大きな問題が存在する。近年の学生たちは、その過酷な就職活動の過程で「自己分析」や「自分探し」を求められる。そうしてそれは今までの自分を否定し、どうやったら企業に受け入れてもらえるのかばかりを考えてしまうようになっているのだ。ブラック企業はそこに付け込んでくる。仕事がうまくできない社員に対して手を差し伸べるのではなく、どうして出来ないのか・何が足りないのかをカウンセリングという名の自己啓発を行わせる。そうしてまるでその人が「ダメ人間」かのように洗脳していくのだ。そうして会社に適合できない人間を次第に壊していくのである。
本書では、そういったブラック企業の様々な手口や、ブラック企業から自分自身を守るために私たちが出来ることは何か、ブラック企業を無くしていくには何が必要なのかを解説している。現代社会の暗部から自らを守るために、本書を一読することをお勧めする。
(836字)
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C1181217 佐藤茉莉香さん (80disvu9)2021/7/31 20:29 (No.239732)
希望のニートーー二神能基 『希望のニート』
(新潮文庫、2009年)


この本では、現代でも問題視されている「ニート」について、自身の経験をおりまぜながら書かれており、ニートが“働く意欲の無い若者”ではないのだと伝えている。まず「ニート」とはなんなのか、という部分から書かれており、なってしまう原因、そしてどのように向き合っていくべきなのか、を実際に自身が出会ってきたニートと呼ばれる人達の話と一緒に進んでいく。多くの人は「ニート」と聞いてマイナスな印象を持つ中、著者はプラスな印象をもち、それを多くの人に伝えようとしている。
「ニート」と聞いて、「働くことから逃げている若者」のことを言う、と考える人が多くいる。しかし、それは違う。逃げているのではなく、「働きたくても働けない」のである。親や社会からのプレッシャー、環境へのストレス、自分自身への自信のなさ、など何らかの理由があり、働けなくなってしまった人のこと指しているのだ、と作者は訴えている。「ニート」が増えていっている原因として、もちろん社会的状況が影響しているが、「親」から受けるもの、感じるものでニートになってしまう人が多くいる。(もちろん親を責めている訳では無い。)そこから「子育ての難しさ」を感じ取ることが出来た。著者自身もニートを経験して、そこから結婚をし、子育てをしていく中で学んだことがあったと書いている。
「ニュースタート事務局」で不登校や引きこもりの子供の対応に悩んでいる親御さんと面談したり、1994年に「ニュースタート・プロジェクト」とという不登校などの若者をイタリアに送り、農園生活で彼らの元気を取り戻す、という取り組みや、5年後、不登校や引きこもりの若者を支援する、NPO「ニュースタート事務所」を立ち上げ、多くの「ニート」の人達と向き合ってきた著者が見つけた「ニート」が持つ希望は、問題視されるだけではなく、こらからの社会に大きな影響を与えるだろう、という著者の気持ちが強く書かれている。(795文字)
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