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c1191457 杉原拓樹さん (80f3lhnh)2021/8/1 22:59 (No.240544)削除「ボランティアと被災地」――笠虎崇『検証・新ボランティア元年―被災地のリアルとボランティアの功罪』(共栄書房,2012)
「絆という言葉に酔っているのは、被災地以外の人のみ」という冒頭から始まる冒頭。メディアから発せられて広まったものの、被災地の人から見ると気持ちが悪い言葉だ。
ボランティアをすることは決して悪いことではない。しかし、そのボランティアをしに来ている人々と、被災された方の気持ちのギャップや共有はなかなか難しいものだ。「助けてあげる」というスタンスでボランティアに参加してきた人に文句すら言えないもどかしさの中で生活する苦しさを被災地以外の人にはわかることができない。同情するなら仕事がほしい、そんな当事者たちの思いを酌んであげることはボランティアの人にはわからない。心の中の隔たりは解消することができないのだろうか。
被災地のボランティア迷惑論の一部はメディアによりつくられていることも忘れてはいけない。避難所生活を送る被災者の方にとって、避難所の運営をうまくできているところだったら、この上ないありがたみだっただろう。ボランティアで関東・関西から物資を運んでくれたトラック運転手の方にも我々は頭が上がらないだろう。
また、気仙沼などに津波から押し上げられ陸にあがったままの船や、津波による被害の受けた建物など、一部を遺そうという考えがあった。いわゆる「負の遺産」としての観光地化だ。「不謹慎」、「見学とは言語道断」など様々な声が言われるのは妥当なことである。復興を越え、新たな資源を得るとすれば、この観光地化があってもよい。今後被災地の学習施設としての働きを持ち、次世代の考え方や災害の怖さを知るきっかけにすることも大切だ。
ボランティアも復興も形は様々であるが、震災から10年経ったいまでも、被災された方の中には苦しんでいる方もいる。ボランティアと被災地の兼ね合いの難しさをリアルな声を鏡写ししている。被災者の方から見たボランティアの方の記述が怖いほどリアルに伝わり、ボランティアで参加することの意義を考える一冊になっている。
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