NPO・NGOの現場からうまれた文献のbook review

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C1180413 遠藤なつみさん (80g89oqo)2021/8/2 17:57 (No.241087)削除
「不登校って問題なのか?」
奥地圭子ーー『不登校という生き方 教育の多様化と子供の権利』(NHKブックス、2005)

東京シューレの5つの方針は「誰もが安心していられる居場所であること。」「やりたいことをどうしたらやれるかいっしょに考え、現実を応援する。」「子ども個人の自己決定を尊重する。」「子どもの場は子どもが中心であり、大人は共に考え、いっしょに必要なことをおこなう。」「みんな違ってそれでいい(個の尊重)。」である。
1980年代半ばから日本で広がっていったフリースクールの中で代表的的であるのは、奥地圭子さんが開設した「東京シューレ」である。本書は、22年間の教員生活に終止符を打ち、1985年からフリースクールを開設した著者による不登校やフリースクールに関する考え方を知る本である。
そもそも、奥地さんがフリースクールを開設したのにはきっかけがあった。それは自身の子どもの登校拒否である。母親目線、教員目線から見るならば、学校に行って当たり前、多少のことにくじけず登校してほしいという子どもの気持ちもを考えていないものであった。無理してでも学校へ行かせていたある日子どもは拒食症になってしまった。それからというもの工夫をこらす日々が続き渡辺位さんとの出会いで考えさせられた。自分は子どもの心に寄りそうことができていなかったことを。
この本では、東京シューレを軸に不登校やフリースクールについて書いてあり、活動としては教科書に縛られずそれぞれの子どもがやりたいこと等を自分の意思でやることを前提として支援している。例えば、鉄道好きな子達が協力し合ってミニトレインを作ってみたりする。
東京シューレでの活動やその他ネット、交流会で交流をしてきた27年にのぼる歳月が教えてくれたのは、不登校は問題行動ではなく、問題なのは「不登校は問題」とみるまなざしや考え方である。また、日本の教育に生かすべきポイントがある。それは、「子どもの個性・権利の尊重」「法的な位置づけと公的資金」「施設・設備・教育環境」「進学・就労・社会認知」の4つである。これらを取り入れ変革していく時代がこれから必要である。(840字)
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c1181246 三條烈さん (80g1tl50)2021/8/2 14:57 (No.240959)削除
子ども達の成長をどう支援すればよいか- - 大谷尚子、白石草、吉田由布子「3.11後の子どもと健康 保健室と地域に何ができるか」(岩波ブックレット、2017)

 この本では、かつて経験したことのない大規模な事故、東京電力福島第一原子力発電所事故で被害にあった子ども達の成長の支援のあり方について書かれている。日本では原発事故から6年以上が経過しているにもかかわらず、福島県内では「県民健康調査」が行われているだけであり、その検診も縮小されている。年間の放射線量は20ミリシーベルト以下の地域は次々と避難指示が解除され、避難指示区域外の避難住民に対する住宅支援は終了し、復興大臣が「避難は自己責任」と口にする有様であり、事故を起こした東京電力、国双方とも誰1人として責任を取っておらず、筆者は無責任な国の前に、地域NPOの力で被災した子ども達の支援を行おうと考えている。
 被災した子ども達の支援を行うにあたり、筆者は1人ひとりをよく観察し、気づくということ。子どもの異変を、比較・集積し、周囲に伝えることでさらなる事実を明らかに。自分たちで実態をつかみ原因分析の記録化を、学校も地域も保護者とともに。共に生活する中で、子どもに伝える。子どもを守る仲間との協力。の5つの視点が必要だと本書では語られている。
 福島県外では、行われていなかった甲状腺検査を受けるため、千葉県の「東葛協議会」では「東葛地区放射線対策協議会」を設置し、放射線測定を開始した。これを受けて千葉県九市が、地域住民の声を背景に、度々、復興庁や環境省に足を運び、国の責任による甲状腺検査の実施を要請した。国は、福島県外での甲状腺検査を見送ったが、厳しい情勢がある中でも、いくつかの自治体が独自の判断、独自の財源で甲状腺検査の実施に踏み切った。
 自分の中では、国は協力してくれるもの、国に頼っておけば大丈夫であるという固定概念を持っていたが、この本をきっかけに自分たちのことは自分たちで守っていかなければいけないということを再認識した。

(848字)
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C1192161 渕上鈴さん (80fzzfbq)2021/8/2 14:05 (No.240945)削除
学校に行かないという選択肢――奥地圭子『不登校という生き方 教育の多様化と子どもの権利』日本放送出版協会、2005
 22年間の小学校教師を経て、東京シューレ(今でいうフリースクール)を開設した著者の奥地圭子さん。自身の経験や東京シューレに通う子どもたちとその親の実際の気持ちが鮮明に書かれている。現代の学生は中学や高校で不登校や別室登校の生徒がいたということも大半だろうし、実際に自分が不登校を経験したことがある人も少なくないと思う。東京シューレでは、安心できる居場所であること、やりたいことの実現を応援すること、個人の自己決定を尊重すること、子どもの場は子どもが中心であること、みんな違ってそれでいいということの5つの考え方を基に子どもたちとともに作ってきたと述べられている。著者は東京シューレで知識や社会性を伸ばし、生き生きと個を発揮する子ども達を見ていると、その子個人に「心の問題がある」「弱さや甘えがある」「協調性がない」などという従来の不登校観では説明できないと感じると語っている。今この瞬間も学校に行かなければいけない、同じように生活するべきだ、みんなやっていると周りの大人から無言の圧力に押され、プレッシャーを感じて登校している子どもたちもいるだろう。また、親が自分の気持ちを理解してくれない、うまく言葉にできないということもあると思う。フリースクールに通うことが難しい場合などは、この本を読んで自分のことをわかってくれる人は必ずいるということや、学校だけでも色々な選択肢があるということを知ってほしいと思う。他にも進学や勉強について、具体例と合わせて知ることができる。また、海外での事例や日本との不登校観の違いが述べられているため、今後の日本の教育の多様化の希望を感じることができると思う。(747字)
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c1180241 石川 中和さん (80ft0apa)2021/8/2 10:50 (No.240843)削除
NPOで働く===工藤 啓 2011年7月14日 東洋経済新報社

NPOで働くと考えた際、どんな仕事内容がおもいつきますか?NPOで働くとはどういうことなのかについて紹介をしています。社会に与える影響力はどんなものか。どのような組織なのか。どのように利益を生み出しているのか。福利厚生、給与水準はどうなのか。全て隠さず赤裸々に書いてあり、NPOに対する疑問が解決されたり、将来NPOで働きたいと考えている方、新たなNPOの役割と新しいビジネスのあり方が見えてくる内容になっています。また、学生時代の生活習慣、取り組みなど書かれているため、自分と比較するのも良いと思います。
 著者である工藤啓さんはNPO法人育て上げネットの代表者であり、独自で展開している事業で、若者が最良の支援を受けられるよう、支援現場の必要に応じてサービスを開発・展開し、新たな支援手法を生み出すことをしています。「若者のために何かをしたい」と高い芯を持つ、企業と連携・協働して、若者と社会をつなぐサポートをしています。それらは若者当事者や保護者を支援するだけではなく、支援現場を可視化・体系化し支援者を育成することで救いの手を増やし、多岐にわたる支援を実現しています。
「働く」「働き続ける」社会を構築するためにも、安心感を実感させ、挑戦出来る関係性ある場の提供と広く社会全体で若者を応援する。この若者支援を社会投資と工藤さんは捉えています。その理由として、学生時代の訪れた欧州において、若者支援施設の方に「若者を支援する意味、それは社会投資だ」といわれたとき、居場所がなく社会とのつながりを模索している若者が身近な存在であった工藤さんの胸を打ったそうです。
引きこもり・ニートが大きく取り上げられ、ますます社会へ羽ばたきづらい環境へと変化をし、より一層孤独を感じる若者が増えていく現代社会で、若者に羽を授けよう懸命にサポートをし、見返りを求めず「社会投資」だと言い切る姿にとても貫禄を感じました。私達、若者がより一層頑張るエネルギーも込められていると思いました。(820字)
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C1201204 佐藤 洸聖さん (80fna9lq)2021/8/2 08:10 (No.240769)削除
「NPOを知ろう」
『初歩的な疑問から答える ―NPOの教科書ー』乙武洋匡・佐藤大吾 著
日経BP社、2015年

 この本の著者の一人である佐藤大吾氏は、何度もNPOについての講演会を行ってきた。その中で質問されることは、NPOの基本に関することが多かった為、NPOの発信力が弱く、NPOに関わっている人があまり増えていないことを実感していた。本書はそんな「NPOを良く知らない人」に向けての内容である。本にまとめることで、より多くの人に手に取ってもらい、目に触れてもらうことでNPOの重要性を伝えることを目的に作られている。また、第二章以降は、NPOを立ち上げてみたい、NPOで働いてみたい、という人のために、NPOに対する理解を深める内容が綴られている。NPOを立ち上げるねらいや、社会への貢献の仕方などを提示し、将来の選択肢の一つとして視野に入れてもらうことを目的としている。
 NPOとは、非営利団体のことを指す。しかし、だからといってお金を稼がないということではない。NPOを経営するためには、どうしてもお金が必要になる。お金をもらうこと自体は営利活動には当てはまらない。非営利とは、利益を分配しないということであり、残ったお金を、事業のために使うことである。つまり、NPOと企業の大きな違いの一つは、利益を求めるかではなく、利益が出た後、稼ぎを何に使うかにある。もう一つの大きな違いは、組織を立ち上げる際に必要な資金調達の仕方にある。会社の場合は、自分たちの手元にある資金のほかに、他人からも資金を集めることができる。しかし、NPOの場合は、他人から資金を集めることができず、自分の手元から出すしかない。これにより、NPOは投資額が少なくなりがちであり、リターンが少ないものとなりやすい。
 NPOで働くのは、ハードルは高くない。新卒で働く人こそ少ないものの、生きていく為の十分な給料をもらえる場所も多い。お客さんとの距離が近い為、やりがいを求めて転職してくる人が多いのである。
 一見難しそうに見えるこのNPOは、実は目的が違うだけで、普通の企業と大きく変わる点がない。NPOを知り、もっと社会を明るくできるということを知れるだろう。
(876字)
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C1202209 堀部優花さん (80fmylkr)2021/8/2 08:01 (No.240765)
災害NPOの新しい支援――つなプロ 報告書編委員会編『つないで支える。災害への新たな取り組み』(公益財団法人日本財団、2012年)

 災害時のNPO団体やボランティアの支援は何を思い浮かべるだろう。多くの団体は炊き出しや物資の援助、泥の片付け作業の体力仕事を行なう。それは見える化した支援の在り方である。反対に体力面ではなく、心のケアのような国が手をつけられないような細部のニーズを確認し、それを専門性の高いNPOや支援してくださる企業に繋げる活動をしているのが「つなプロ」である。2011年3月11日午後2時46分、東北を襲った東日本大震災が発生し、多数の死者・行方不明者をだし、長い避難所生活が余儀なくされた。災害の規模により、ある避難所では食料が行き渡り、生活用品も揃っているところがあれば、1週間温かいご飯を食べていない避難所もあった。避難所によって支援の違いが表れ、避難者もそれぞれが大きな負担を抱えていた。一般の支援の仕方はハード面の衣食住に限られていて、ソフト面の心は支援することができていなかった。そこでつなプロはスペシャル・ニーズと呼ばれる高齢者や子ども、障害者、外国人などの特別なケアをする人への支援を進めた。これまで日本で起こった阪神淡路大震災や中越地震の避難所の課題を活かして、アセスメントシートと呼ばれるライフラインや配慮の有無、不安な点など様々な項目の聞き取りを行なう資料が活用された。エリアごとに聞き取りを行ない、避難所の状況や避難者の把握を行ない必要とするニーズの確認を行なった。確認後はそのニーズに応えるべく、専門のNPOや企業に繋げて対応できるようにした。石巻市では津波による水に対しての恐怖感があるという子どもに対し、つなプロでは宮城県子ども教育センターが行なっている電話相談サービスを紹介し、不安を軽減させることができた。このように独自のシートを活かして、個々のニーズに応えるために当事者と団体を繋げる活動をしたつなプロは被災者の心に寄り添った活動を率先して行なった。これも災害NPOには重要な存在であると言えるだろう。                                                         (800)
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C1190386 遠藤光さん (80flaq7s)2021/8/2 07:14 (No.240748)
ひきこもりのこれまでとこれからーー池上正樹『引きこもり生還期 支援の会活動報告』(小学館、2001)

「きっかけは下痢だった。」
そのように語ったのは、引きこもりの上山和樹さん。もともと優等生であったが、腹痛をきっかけに高校を中退し、引きこもりになってしまった。
全国で推定80万人から100万人いると言われている引きこもりについて焦点を当てた本書は、様々な理由によって引きこもりになってしまった人達自身の独白や、それにインタビューを行うオムニバス形式で、日本の社会構造により引きこもりが出現する事に疑問を感じたジャーナリスト池上正樹により綴られている。引きこもりと一口に言っても、ここ四半世紀できっかけや形態が大きく変わり、専門医やカウンセラーからの対処方法も確立されていない。イメージだと10代〜20代くらいの若年層が定職に就かずに怠けているイメージだが、最近では定職に就いても、挫折や精神的な問題を抱え引きこもる「引きこもりの高齢化」のケースも少なくない。もはや引きこもりは、「甘え」や「怠け者」という従来のステレオタイプのイメージではなく、誰にでも起こりうる可能性のある社会的問題なのである。
引きこもりに危機感を抱き、NPO法人でも自立支援活動を行っている。本書で紹介されている「NPO法人神戸オレンジの会」では引きこもりの子供をもつ50余りの家族が中心となり、毎月定例会を開催し、引きこもりについての勉強会を行い、引きこもりの子供の居場所作りに努めている。また、国も動き始め、引きこもりについてのガイドラインを示し相談期間を設けて、引きこもり問題について具体的な対策に向けて対応にあたっている。
昨今では、感受性敏感質のHSP(Highly Sensitive Person)や性的指向を表すLGBTなどの単語を見聞きする機会が多くなり、個人のパーソナリティが重要視され、ひとりひとりに合った対応が求められる時代となった。民官一体となり引きこもり問題への解決が必要である。
完璧な救済はなくとも、世界は慈愛で満ちていると信じたい。(820字)
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C1200742 管野優香さん (80fbafvy)2021/8/2 02:34 (No.240714)削除
災害ボランティアの重要性ーーボランティア山形 阿部誠・井上肇・新関寧・丸山弘志『市民の力で東北復興 大震災・原発事故、新しい時代への災害ボランティア論』(ほんの木、2012年)

2011年3月11日14時46分。マグニチュード9.0という超巨大地震が東日本各地を襲った。それに伴って大津波や火災、そして福島第一原子力発電所における原発事故が発生し、世界規模に衝撃を与える甚大な被害が出た。
 山形県米沢市は東日本大震災による被害が少ない珍しい安全地帯であった。米沢市には、原発事故によって福島県から多くの避難者が続々と流れ込み、その人々への対応が求められた。そこで活躍したのが3月19日に米沢市社会福祉協議会や米沢青年会議所などの4団体を中心に結成された「ボランティア米沢」である。米沢市役所職員、市民ボランティアと共に第一次避難所であった米沢市営体育館で活動を行った。
 この際に最前線で活動をしていたのが本書の著者である4名の方々だ。本書は、震災当時の彼らの活動の様子や災害ボランティアに対する考え方などが述べられている対談本である。彼らは、阪神淡路大震災の際に組織された「ボランティア山形」の理事、理事局長、事務局長をそれぞれ務めている。
ボランティア山形での活動で得た人々とのつながりが、東日本大震災の際の米沢での支援活動に大きな影響を与えた。全国各地のNPO・NGOが米沢に集まったほかに、阪神淡路大震災で支援をした神戸の人々が今度は米沢の支援に尽力してくれたことなどによって、当時の米沢は避難者支援の中心地であったと言えるだろう。
ボランティア米沢や他NPO・NGO、そして民間ボランティアなど多くの人々の活動により、米沢市営体育館は指定避難所ではなかったにも関わらず、毎日全員に3食の食事の提供、逸早い毛布の提供、米沢市内の温泉入浴サービスや足湯、などといった高水準の支援がなされた。
東日本大震災で大きな役割を担ったボランティア。東日本大震災での学び、反省を踏まえて、災害ボランティアに求められるのは、リーダーシップをとることができる人材と行政や組織との連携、継続力だと語られている。東日本大震災時の米沢では、継続的なボランティア活動と運営がうまく機能したことが、高水準の支援に繋がった。
 災害ボランティアに対する本音と求められる新しい市民の力がここに記されている。
(877字)
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C1202250三浦花凜さん (80f3wv4w)2021/8/1 23:07 (No.240557)
「人と向き合う」

著者名:中村智志  書名:「命のまもりびと 秋田の自殺を半減させた男」
出版社名:株式会社 新潮社  出版年:平成29年6月1日

著者の中村さんはこの本を書くにあたって佐藤久男さんという人物を取り上げている。佐藤さんは、父の自殺と以前勤めていた不動産会社の倒産、経営者仲間の自殺をきっかけに企業の経営者の自殺を防ぎたいと考え、秋田県でNPO法人「蜘蛛の糸」を立ち上げた。「蜘蛛の糸」では、主に経営者を対象とした相談に応じている。相談は原則として面談、そして無料で受けることができる。佐藤さんは二時間でも三時間でも相手の相談にじっと耳を傾けるというスタイルをとっている。2016年には秋田県の自営業者の自殺者は、「蜘蛛の糸」がつくられた2002年の五分の一ほどに減らすことができた。また佐藤さんは毎月一回、東日本大震災の被災地を訪ねて活動を行っている。何としても避難者が命を絶つことだけは食い止めたい。被災地の悲しみに触れなくてどうして自殺予防ができるのだろう。避難者の支援にあたるにはまず被災地を知ること。現場に行って体で受け止めたものが真実であるという言葉が印象的だ。「蜘蛛の糸」は経営者の自殺者を防ぐことだけでなく、佐藤さんが震災を経験して感じた命の尊さや命と向き合う姿勢も大事にしている団体なのだ。
佐藤さんは経営者などの大人の自殺には対応しているが、学校でのいじめによる子どもの自殺には対応していない。なぜなら佐藤さん自身子どもに対する関わり方やいじめの解決策がわからないという単純な理由である。しかしこのように佐藤さんの自殺に対して突き放すように反応したのは、命と向き合うことの重みを知っているからこその考えなのだ。命と向き合い続ける「蜘蛛の糸」のような居場所が増えるといいと思う。
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C1202250三浦花凜さん (80f3wv4w)2021/8/1 23:08
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c1191457 杉原拓樹さん (80f3lhnh)2021/8/1 22:59 (No.240544)削除
「ボランティアと被災地」――笠虎崇『検証・新ボランティア元年―被災地のリアルとボランティアの功罪』(共栄書房,2012)

 「絆という言葉に酔っているのは、被災地以外の人のみ」という冒頭から始まる冒頭。メディアから発せられて広まったものの、被災地の人から見ると気持ちが悪い言葉だ。
 ボランティアをすることは決して悪いことではない。しかし、そのボランティアをしに来ている人々と、被災された方の気持ちのギャップや共有はなかなか難しいものだ。「助けてあげる」というスタンスでボランティアに参加してきた人に文句すら言えないもどかしさの中で生活する苦しさを被災地以外の人にはわかることができない。同情するなら仕事がほしい、そんな当事者たちの思いを酌んであげることはボランティアの人にはわからない。心の中の隔たりは解消することができないのだろうか。
 被災地のボランティア迷惑論の一部はメディアによりつくられていることも忘れてはいけない。避難所生活を送る被災者の方にとって、避難所の運営をうまくできているところだったら、この上ないありがたみだっただろう。ボランティアで関東・関西から物資を運んでくれたトラック運転手の方にも我々は頭が上がらないだろう。
 また、気仙沼などに津波から押し上げられ陸にあがったままの船や、津波による被害の受けた建物など、一部を遺そうという考えがあった。いわゆる「負の遺産」としての観光地化だ。「不謹慎」、「見学とは言語道断」など様々な声が言われるのは妥当なことである。復興を越え、新たな資源を得るとすれば、この観光地化があってもよい。今後被災地の学習施設としての働きを持ち、次世代の考え方や災害の怖さを知るきっかけにすることも大切だ。
 ボランティアも復興も形は様々であるが、震災から10年経ったいまでも、被災された方の中には苦しんでいる方もいる。ボランティアと被災地の兼ね合いの難しさをリアルな声を鏡写ししている。被災者の方から見たボランティアの方の記述が怖いほどリアルに伝わり、ボランティアで参加することの意義を考える一冊になっている。
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