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C1211326 鈴木冴香さん (8ezdmi12)2022/8/3 20:51 (No.494337)削除最近の若者は、って何?―― 仁藤夢乃 『難民高校生 絶望社会を生き抜く「私たち」のリアル』(ちくま文庫, 2016)
この本は大きく2部編成になっていて、前半は当時の仁藤さんが見てきた社会について、後半は様々な経験から活動していく様子やこれからの若者への思いが綴られている。
この本の著者である仁藤夢乃さんはかつて、家族との関係の悪さや自分の居場所の見つからなさから家に帰らずほとんどを渋谷で過ごす、いわゆる“難民高校生”であった。そこから高校中退という選択、阿蘇さんとの出会いや農園ゼミの参加などを通して成長していく過程が書かれている。自分の中で不自由なく生きてこられたと思う人は本当の話なのかと疑問に思うかもしれない。居場所を求めた援助交際、誰の子かわからない妊娠や中絶など、ここに書かれていることは紛れもない現実なのである。そのようなリアルが生々しく描写される。
「最近の若者はダメだな」という言葉をよく聞くが本当に若者がダメなのかについても著者は考えていた。「大人は」「若者は」と区別する人はよくいるが、その言葉を言えるほど関わりを持てているのか?著者は「ダメな子だ」と言われ頼りどころを失い、社会からの認識が薄れることで希望や可能性も失って簡単に難民高校生になれてしまうのだと著している。くくりではなく一人ひとりを見てほしいという思いも込められていた。
著者は震災後に「Colabo」を結成する。女川高等学校の生徒と大沼製菓ともに「地域を元気にする商品開発」を行った。また、震災復興だけでは終わらず、自身の経験から当時のような居場所のない人たちが社会との関わりを持つことができるようにと地域・大人・若者の協働の場をつくる活動も行っている。その活動から生まれた変化や大人たち・若者に伝えたいことが後半にまとめられている。
アクションを起こしてつながりをつくっている仁藤さんの著書。社会とのつながりの大切さと大きなくくりではなく個と向き合うことの重要性を考えながら読んでほしい。(825)